文系でもわかる乳化
乳化と書いて、「 にゅうか 」と読みます。
乳化は、化学品、医薬品、農薬、食品、化粧品、ペイント、繊維油剤、石油ゴム等の諸工業において広く利用されており、1冊4〜5万円もする専門書が山ほど出版されている奥の深い世界です。
質問1 乳化ってなにかサクッと教えてください。───水と油を混ぜてみよう
水と油を混ぜてみましょう。
水と油をコップに入れてかきまわしても、時間が経つと軽い方の油が水の上に浮いて、二層に分離してしまいます。
なぜかというと、油は水に溶けないからです。油が塩や砂糖のように、水に溶ける性質があれば水と油は混ざるはずなのです。
さらに、水と油は重さ(比重)が違うため、いくらかきまわしても、いつのまにか上下に分離してしまうのです。
また、水と油の間の界面 (境界面を、こう呼びます。専門用語です)には、表面張力が働いています。
表面張力は、界面の面積をできるだけ小さくしようとします。結果、水は水同士、油は油同士まとまって、界面の面積が最小になります。
以上の理由で、水と油は、二層に分離するわけです。
ところが!(・。・)!
ここに、洗剤か石鹸を入れてかきまわしてみると、白く濁ったようになって、混ざってしまいます。
まさに牛乳のようです。この現象を乳化と呼びます。また、乳化させるために入れた洗剤や石鹸を、界面活性剤と呼びます。
質問2 界面活性剤ってなんですか?───界面活性剤の働きによる乳化のしくみ
界面活性剤の分子には、水になじみやすい部分(親水基)と水になじみにくい部分(疎水基)があり、図1のような姿をしているとお考えください。 よくマッチ棒に例えられます。
図1: ステアリン酸ナトリウム(石けん)の構造 石けん百科 株式会社生活と科学社 https://www.live-science.com 「知識編 界面活性剤とは」より |
図2: 油さん、界面活性剤くん、水さんのイメージ |
図1: ステアリン酸ナトリウム(石けん)の構造 石けん百科 株式会社生活と科学社 https://www.live-science.com 「知識編 界面活性剤とは」より |
図2: 油さん、界面活性剤くん、水さんのイメージ |
図2のように、「油さん」は「界面活性剤くん」の左手をしっかり握り、「水さん」は「界面活性剤くん」の右手をしっかり握っています。
「界面活性剤くん」は小さいので、遠目に見れば「油さん」と「水さん」が、しっかり手を握り合っているように見えるのです。
乳化した状態は、肉眼では見えないくらい小さなツブツブがたくさんできて、見た目には、まじりあった状態になっています。
まるで牛乳のようにしか見えません。
さらに、このツブツブひとつひとつを拡大すると、ツブの表面は、
水になじみやすい部分である親水基を外側にした「界面活性剤くん」に覆われているのがわかります。
このツブツブひとつひとつを乳化粒子と呼びます。英語の"emulsion"より、エマルション、エマルジョンとも言います。
質問3 乳化粒子についてもう少し教えて
界面活性剤に覆われた乳化粒子は、肉眼では確認できないくらい、とても小さいです。(図3)
乳化物には大きく分けてO/W(オイル イン ウォーター)型とW/O(ウォーター イン オイル)型の2つがあります。 今までお話してきたものは、水の中に油が小さな乳化粒子となって点在しているものなので、O/W型になります。 牛乳、マヨネーズ、化粧品乳液などがそうです。
もう1つのW/O型は、マーガリン、化粧品のファンデーションなどです。
ちなみに専門的な表現として、例えばO/W型の場合、油滴を「分散相」、水を「連続相」と表現することもあります。