社報shinko~親交~ 2021年08月号

文系でもわかる分散 その5

乳化分散技術研究所®

本紙の美容コラムでおなじみの乳化分散技術研究所® 高橋さんが「分散」について丁寧にわかりやすく解説する「文系でもわかる分散」第5弾。紙上日焼け止めクリーム作製講座の気になる続きをどうぞ!

■登場人物
高橋さんレクチャー:高橋さん   ちーちょん質問者:ちーちょん
大手からベンチャーまで、化粧品業界で長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト。工学博士。 100%文系の広報担当。マスク焼けも気になるこの頃です。
高橋さん:今日はいよいよ材料を混ぜて、日焼け止めクリームを作っていきます。
ちーちょん:日焼け止めクリームは1.水パーツ、2.オイルパーツ、3.散乱剤パーツ、4.増粘剤パーツに分けれられるんでしたよね。
高橋さん:はい。散乱剤パーツと増粘剤パーツは攪拌機選択のポイントになりますので、まずこの2つの説明から始めましょう。

日焼け止めクリームを作ってみよう!Part2


Q1.散乱剤パーツ(分散)の注意点は?

高橋さん:紫外線散乱剤は粉末原料です。紫外線散乱剤の微粒子は、ぬれやすい液体の中で分散させます。今回は汗をかいても落ちにくくするために、油にぬれやすい微粒子粉末を使って油の中に微粒子を分散させることにします。分散が目的ですから、せん断力の強い攪拌機(例えばフィルミックス®)を使いましょう。このパーツは「分散」ですから再凝集を避けるためになるべく後の方で準備するのがベターです。

ちーちょん:分散は延命治療ですもんね。

高橋さん:各パーツ共通で注意しなければならないのは「ダマを作らないこと」。まだ、最初の準備段階ですが、ここで手を抜いてはいけません。どこを取っても濃度が違わないようにしっかり攪拌操作を行う必要があります。

ちーちょん:はい、ダマを作らないようにしっかり攪拌します!


Q2.増粘剤パーツ(溶解)の注意点は?

増粘剤の溶解例 高橋さん:増粘剤パーツは水用、油用ともに液を大きく動かしながら、少しずつ加えていきます。攪拌の仕方だけでなく、投入の仕方によっても出来栄えは大きく違ってきます。前回もちょっと話しましたが、増粘剤の厄介なところは溶解するにつれて液が動きにくくなるところです。とろみの指標になる「粘度」は液流動に対する「抵抗力」を意味しますから、溶けていくうちに液は動きにくくなり、効率が悪くなってきて、ひどい時は攪拌部だけが空回りして液がびくともしないということもあり得ます。

ちーちょん:そうなってしまったら攪拌できないですね……?(粘度についてもっと詳しく知りたい方は当社かくはん塾「文系でもわかるレオロジー」を読んでくださいね。)

高橋さん:こういう事態を防ぐために、いったん別の液体に分散させてから二段階で溶かしたり、油の場合は100℃以上の高い温度をかけたりすることがあります。つまり、ダマをなくすのは結構大変な作業なのです。細かいダマであれば、しばらく置いておくとなくなるので、よく攪拌した後、増粘剤パーツを十分に寝かせておきましょう。

Q3.どうやってクリームにするの?


ちーちょん:高橋さん、増粘剤がいい感じで溶けたようです!

高橋さん:うん、いい感じですね。溶解したパーツは健康体ですから、一度溶かしてしまえばしばらく大丈夫です。ではその他のパーツを作っていきましょう。

ちーちょん:はい、あと3パーツですね!

高橋さん:1.水パーツは、水に溶けやすい保湿剤や酸化防止剤などの添加剤を加えて、レヴィアスタア®など液を大きく動かすタイプの攪拌機を使って混ぜます。2.オイルパーツも同様です。油に溶けやすい乳化剤や夏用のさっぱり感を出すためにシリコーンオイルを油に溶かしましょう。本来はここに紫外線吸収剤が入るのですが、今日は思い切って抜いてしまいます。肌が弱い人やお子様のためのノンケミカル処方です。

ちーちょん:わー、親子で使えますね。ありがとうございます♪

高橋さん:先ほど言いましたように、分散する3.散乱剤パーツは全部混ぜ合わせる直前に攪拌します。散乱剤パーツができあがったら各パーツ揃いましたので、すべてのパーツを順番に加えて、ホモミクサーMARKⅡCLEARSTAR®/クリアスタア®など乳化に適した攪拌機で乳化させてクリームにしましょう。乳化中は温度があがりますので、熱に弱い香料などは少し冷えてから加えます。これで日焼け止めクリームの完成です。

ちーちょん:やった~!完成~~!!うれし~~~!!!早速このクリームをぬって散歩に行きましょう!

高橋さん:これで今年の夏も万全です!ついでにスタミナつけに行きましょうか?


高橋さんとちーちょんとクリーム 文系でもわかる分散その5はここまで。
ようやく日焼け止めクリームが完成しました!

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