社報shinko〜親交〜 2021年07月号
文系でもわかる分散 その4
乳化分散技術研究所®
本紙の美容コラムでおなじみの乳化分散技術研究所® 高橋さんが「分散」について丁寧にわかりやすく解説する「文系でもわかる分散」第4弾。今までの学習をもとにした実践編、紙上日焼け止めクリーム作製講座がスタートします!
■登場人物 | ||||
レクチャー:高橋さん | 質問者:ちーちょん | |||
大手からベンチャーまで、化粧品業界で長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト。工学博士。 | 100%文系の広報担当。日にあたると肌がすぐ赤くなってしまいます。 |
高橋さん:ここまで分散と溶解の違いについて勉強しました。粒子は小さくなればなるほど分散したくないので、油断しているとくっついて沈んでしまいます。そうはさせじと分散の3要素を駆使して分散状態が少しでも長く続くように延命治療を施していることをご説明しました。これから分散の3要素を実際に試してみませんか?
ちーちょん:え?私にもできますか?
高橋さん:一緒にやってみましょう。題して「日焼け止めクリームを作ってみよう!」
ちーちょん:みよー?!
ちーちょん:え?私にもできますか?
高橋さん:一緒にやってみましょう。題して「日焼け止めクリームを作ってみよう!」
ちーちょん:みよー?!
日焼け止めクリームを作ってみよう!
Q1.分散、溶解に適した攪拌機とは?
高橋さん:今年もまた暑い夏がやってきました。強力な紫外線から肌を守るために日焼け止めは必需品です。その日焼け止めクリームの中味は、実は分散技術、溶解技術の宝庫なのです。ちーちょん:分散と溶解、両方とも?!まさに2つを勉強したての私にぴったりですね!
高橋さん:日焼け止めには紫外線吸収剤と紫外線散乱剤が入っています。紫外線吸収剤は溶解、紫外線散乱剤は分散させて使います。
ちーちょん:溶解や分散には攪拌機を使いますよね?
高橋さん:その通りです。溶解には液が大きく動くような攪拌機を使います。紫外線吸収剤と液体が出会う確率を高めるためです。つまり優しい攪拌ですね。分散にはくっついた粒子たちを力技で引き裂こうとする攪拌機を使います。こちらは冷たい攪拌です。ここで機械の選び方の図を見てみましょう。
高橋さん:「液流動」というのは液全体を動かす目安です。上に行くほど液との出会いの機会が増えますから、溶解に適しています。「せん断」というのはすれ違いざまにスパっと切り取るようなイメージの力です。右に行くほど粒子同士を引き裂く力が大きくなりますから、分散に適しています。このように目的によって使う機械の種類が違ってくるのです。図の右上の複合型攪拌機は、攪拌部を2個以上取り付けることができて、溶解にも分散にも使える便利な機械です。アヂホモミクサー®とかコンビミックス®なんかがこれにあたります。化粧品会社なら必ず持っている定番機ですね。
ちーちょん:いろいろな攪拌機がありますが、目的に合った機械を選ぶことが大切なんですね!(プライミクスは研究用から生産用まで様々な高速攪拌機をラインナップしています。攪拌機の種類、用途、選定のポイントについて、もっと詳しく知りたい方は弊社までお問い合わせください。)
Q2.日焼け止めクリームの材料は?
用意するもの:紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、水、油、とろみをつける増粘剤(水用、油用)、乳化剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤などの添加剤高橋さん:日焼け止めクリームは1.水パーツ、2.オイルパーツ、3.散乱剤パーツ、4.増粘剤パーツ分けられます。本当は、香料パーツ、薬剤パーツなどキリがないぐらいのパーツに分かれる場合もありますが、今回は基本の4つでいきましょう。まず、水に溶けやすいもの(水パーツ)と油に溶けやすいもの(オイルパーツ)を分類し、それぞれ別々に溶解操作を施します。溶解操作には液を大きく流動させる攪拌機(例えばレヴィアスタア®)を使いましょう。
ちーちょん:増粘剤は水用、油用があるんですね。それぞれにとろみをつけるんですね。
高橋さん:はい、そうです。とろみをつけるのは、安定に分散させるのと、ぬりやすくするのが目的です。このとろみをつけるために加える増粘剤は、溶解させるのに時間がかかるんですよ。
ちーちょん:ぷるぷる、どろどろしているからですか?
高橋さん:増粘剤の分子は非常に大きくて、ほぐれにくく、ほぐれてくると今度は液が動きにくくなるからです。また、油にとろみをつける油性の増粘剤は、非常に高い温度をかけないと十分に溶解してくれません。こういう理由から増粘剤は使う前日に溶解して一晩寝かせて使うことが多いです。
ちーちょん:事前準備も必要なのかー。お料理と似ていますね。
高橋さん:すぐ食べ物にいっちゃいますね(笑)。ではちょっと休憩でおやつにしましょうか。散乱剤パーツと増粘剤パーツは機械選びのキモになりますので、次回、重点的に説明します。
文系でもわかる分散その4はここまで。
次回は材料を混ぜて日焼け止めクリームを作っていきます。お楽しみに!
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