社報shinko〜親交〜　2021年06月号

本紙の美容コラムでおなじみの乳化分散技術研究所® 高橋さんが「分散」について丁寧にわかりやすく解説する「文系でもわかる分散」第3弾！いよいよ分散の3要素にせまります。

■登場人物
	レクチャー：高橋さん			質問者：ちーちょん
大手からベンチャーまで、化粧品業界で長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト。工学博士。			100％文系の広報担当。ショートケーキのいちごは最初に食べます。

Q1.分散の3要素って？

ちーちょん：うまく分散させるときのキーワード、分散の3要素について教えてください。

高橋さん：分散の3要素とは「ぬれ、解砕（かいさい）、安定化」です。です。この３つのどれが欠けても分散はうまくいきません。1つずつ説明していきましょう。

Q2.「ぬれ」とは？

高橋さん：まず「ぬれ」について。「ぬれている」の反対は何ですか？

ちーちょん：乾いている？

高橋さん：正解です。乾いている状態では、粉の周りは空気で満たされています。水に「ぬれる」というのは、周りの空気が水と置き換わる現象です。でも、粉の性質によってはどうしても水になじめなくて、水と一緒に居るのが苦痛という子もいます。だから、界面張力が働いて水と接触する面積をできるだけ小さくするために、凝集して空気の方を向こうとします。次の写真を見てください。右は粉がぬれている状態、左はぬれることを拒否している状態です。左のような状態では、どんなにかき回しても分散せずに浮いたままになります。
ちーちょん：どんなにかき回しても分散できないなんて……。ぬれって大事なんですね。

高橋さん：またココアを例にとりますと、小さなココア粒子同士はくっついている方が楽だというのは前回言いましたが、表面だけでもお湯と仲良くするような工夫がされています。つまり外面だけ良くするわけですね。これを「ぬれを良くする」と言います。そもそもココアの場合は、ココアバターがその役割を果たしていますが、一般的には分散剤と呼ばれるものを添加したり、粉の表面を直接加工したりして、さらにぬれを良くする場合もあります。分散剤には粉と水の間の界面張力を下げる働きがあります。

ちーちょん：界面張力って前回も出てきましたね。境目をできるだけ小さくしようとする力でしたね。

高橋さん：そうです。片方が空気の場合を特に表面張力と言います。お酒をどこまでこぼさずに注げるか、酔っぱらうと必ずやる人がいますけれど、お酒がコップの上で盛りあがるのは表面張力の仕業です。

Q3.「解砕」とは？

高橋さん：次に「解砕」について。「解こう」、「微細化」とも言います。今度は力技です。粉の表面がぬれると、一見、分散したように見えます。しかし、粒子の大きさを計ってみると何個かくっついたままであることがよくわかります。ここでくっつこうとする粒子同士を強引に引き離すのが解砕という作業です。このステップで我々の攪拌機が大活躍します。ココアの場合はスプーンを使いますね。この解砕という作業をサボるとちゃんと分散できていないので、短い時間で沈んでしまいます。その様子を見てみましょう。非常にぬれの良い例ですけれど、フィルミックス®を使って1分攪拌するだけで、10日後の分散状態がこんなに違うんです。振っただけだともう沈み始めているのがよくわかりますね。
ちーちょん：フィルミックス®すごい！解砕をしっかりすることが分散の延命につながるんですね。

高橋さん：そうなんです。素敵でしょ？

Q4.「安定化」とは？

高橋さん：最後に「安定化」について、力技で引き離したとしても粒子同士はちょっとのすきをついて、またくっつこうとします。そのすきを見せないために、例えば電気的にマイナス同士が反発するのを利用するとか、粉の表面にばねのような分子を生やして、近づいたらバウンドさせるとか、近づくと自然に水が割って入ってくるようにするとか、いろんな工夫をするわけです。化粧品にはいろいろな成分が配合されてますが、安定化のために加える成分も含まれています。 このような3つがそろって初めて良い分散状態ができあがります。ぬれの悪い粉末をいくらかき回しても分散しませんし、分散しているように見えても、ちゃんとした攪拌をしないと粉の粒子はくっついたままです。分散状態ってのは、ちょっとでも手を抜くと長続きしないんですよ。

ちーちょん：ぬれ、解砕、安定化と3つそろわないとダメなんですね、だんご3兄弟みたい！

高橋さん：今日のおやつは団子に決まりですね。あんこ、きな粉、みたらしの3要素で！

• 文系でもわかる分散 その1
• 文系でもわかる分散 その2
• 文系でもわかる分散 その3
• 文系でもわかる分散 その4
• 文系でもわかる分散 その5
• 文系でもわかる分散 その6