Today's Notables 2014年10月
AFG会議に出席
代表取締役社長 古市 尚
さる8月1日(金)から3日間、第2回アライアンス・フォーラム・グローバル会議(AFG会議)に出席しました。主催者はアライアンス・フォーラム財団代表理事の原 丈人(はら じょうじ)さんで、内閣府の参与もされている方です。原さんのお父上は原 信太郎さんで惜しくも今年の7月に95歳で他界されましたが、コクヨで専務まで務められた方で世界的に有名な鉄道模型作成、収集家でもあります。私も一度訪れたことがあるのですが、横浜駅徒歩5分のところにある「原鉄道模型博物館」は世界一の鉄道模型博物館で、そのほとんどが原 信太郎氏の手作りで、小学生の頃から作られた鉄道模型の精密さは信じられないほどよくできており、絶対に一見の価値があります。機会がありましたら是非一度、「原鉄道模型博物館」を訪問されることをおすすめします。
少し話が脇道にそれてしまいましたが、まずはアライアンス・フォーラム財団から説明しましょう。アライアンス・フォーラム財団は1985年、カリフォルニア州で創設された米国内国歳入法第501条C項3号の規定に基づき公益法人格で創設された財団で、非政府組織として国連経済社会理事会特別協議資格を持つ団体です。「技術を使って世界を変える」をビジョンに新たな産業を日本において育成し、先進国の中で日本が次世代の基幹産業を支える技術の担い手となり、その技術をもって、世界の発展途上国の貧困問題解決のリーダーになることを目指しておられます。今回はその中でも同財団が提唱される「公益資本主義」を主題に〜公益資本主義実現のために〜というテーマで会議が開催されました。米国発の株主資本主義が蔓延する今の世の中で、「会社は株主のために」という考え方が日本の企業経営にも影響を及ぼし始めています。しかし、短期の投資を目的とした株主は設備投資や研究開発費に正しい理解を示さず、目先の利益だけを考えて株主の権利を主張します。もっと言えば発展途上国の資源開発なども外資系企業が投資をして資源を市場化するのはいいのですが、現地雇用は生まれるものの利権を持つ企業には権力者のみが大株主として君臨し、資源がもたらす利益は投資家に還元され、貧困層にもその国にも還元されていないのが現状です。その様な背景の中、公益資本主義は中長期の投資にはそれなりの還元をしますが、利益の大半を研究開発費に費やしたり、社員に還元したりするなどステイクホルダーへの利益を最大限に優先する考え方です。
わが国では1754年に神崎郡石場寺村(現在の東近江市五個荘石馬寺町)の中村治兵衛が書き残した家訓が意味する近江商人の思想、行動哲学が提唱する「三方よし」(「三方よし」は戦後の研究者が分かりやすく標語化したものであり、昭和以前に「三方よし」という用語は存在しなかったそうです)、の考えのもとに「売り手よし、買い手よし、世間よし」とされ、そのおかげか日本には多くの老舗企業が存在します。創業ないし設立から100年以上経っている企業を老舗企業とすると、帝国データバンクのデータベースによれば、老舗企業は日本に約2万社あり、企業全体の1.6%にのぼっています。老舗企業は欧州にも多く存在し、数的には米国にも100年以上存続する企業は多く存在しますが、近年特に米国では企業の買収、統合などで加速的に減少傾向にあります。原さんが事例に使われる有名なアメリカン航空の話ですが、2008年にアメリカン航空が航空機不況の中で、340億円の削減をしないと会社がつぶれるから給与削減に同意してくれと従業員に迫りました。不況で他の航空会社などでも雇用してもらえる可能性が少ないことから従業員はこれを受け入れました。その結果として経営陣は200億円のボーナスを受け取ったのです。米国では会社は株主のものだと信じられていますから、340億円毎年削減してくれた経営陣に対して1回のボーナスを渡すことのどこが悪いんだとなるわけです。この様な米国発の株主資本主義の考えが世界的な常識となると、発展途上国ではいつまでたっても貧富の差は解消されず、先進国でも新しい産業が生まれにくい経済環境になります。そこで公益資本主義という日本発の中長期投資の仕組みを作り、新産業が生まれやすい市場、ステイクホルダーに利益がもたらされる仕組みを日本発で世界標準にしようというのが、今回の会議の目的です。
会議は金曜日の17時から始まり、原さんによる「第2回AFG会議の狙いと目標」から始まり、東レの日覺社長の講演、自民党税制調査会会長を務められる野田 毅衆議院議員のスピーチ、レセプションが開かれました。2日目は8時半〜夜の9時までびっしりとスケジュールが組まれていました。3日目は各分科会でディスカッションを中心に進められ、1日目、2日目はセミナー後もバーで深夜まで交流を深めることができ、大変有意義な会議でした。 最後に以下の制度を参加メンバーが力を合わせて推進していくことで終了しました。公益資本主義のもとで、わが国を中長期的に繁栄に導く制度
1.法律上、会社の公器性と経営者の責任を明確にする
(みずほの国資本主義原則)
2.中長期の株主を優遇できる制度を作る
3.革新的な技術を事業化し、産業をつくる仕組みを作り上げる
4.ROE(株主資本利益率)に代わる新しい企業価値測定法を確立する
(分配の公平性、事業の持続性、改良改善性など新指標の導入)
5.ゼロ・サムのマネーゲームのプレーヤーのための極端な規制緩和は単に投資家を利するだけに過ぎないので改める
6.公益資本主義原理を軸にして、GDP、GNIを補完する経済指標を作る
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