Today's Notables 2003年04月

MIT訪問記(2)

代表取締役社長 古市 尚


研究室に入ると日本から事前に送ったT.K.フィルミックスは既に開梱され、生みの親である麻の来訪を待ち侘びている様でさえあった。また、隣には日本から米国のマイクロトラック社に手配した粒度分布計も到着していた。とりあえず準備をしてしまおうということで、電源、冷却水の接続などを行ったが、設備担当助手の方が実に手際よく、センチ径のコネクターや先方の設備との取り合いのためのパーツを用意してくれた。案外、海外に行くとこんなつまらないことで手間取ってしまうことが多いので、その手際の良さに感激してしまった。その頃、マイクロトラック社の人間も到着し、粒度分布計のセッテイングを行い、全ての準備が午前中には整った。

ダルゼル教授はMIT化学工学部では実験の実習授業を担当しており、その期ごとにテーマを決め、ゼミ形式で3カ月間プロジェクトに取り組む方式を取っているそうである。今期はT.K.フィルミックスにおける攪拌理論の解明とその効用をテーマに取り組んでいただけることになった。ダルゼル教授がその気になってくれたのも、麻が書いた「21世紀の攪拌技術」(2000年11月初版発行、工業調査会)を英文に翻訳していたのが功を奏した。ダルゼル教授はその「21世紀の攪拌技術」を熟読してくれたので、今回の申し入れに応じてくれることとなった。昼食後、プロジェクトメンバーを紹介してもらったが、ダルゼル教授以外にもコルトン教授が専任で指導にあたってくれる他、Teaching Assistant 1名、生徒3名の合計6名体制でこのプロジェクトに取り組んでくれるとのことであった。コルトン教授も大変な経歴の持ち主で、論文も100以上発表されており、大変心強い教授である。 その後、日本から持ち込んだ試薬でデモンストレーションを行い、麻が攪拌の仕組みや効用について説明を行った。両教授は麻に次々と質問を投げかけ、最後にコルトン教授が「君が言っていることが本当なら、君はけっこう賢いかもしれない」とポツリとつぶやいた。
すべてが終わった頃、今度は実験室隣のバイオテクノロジーの教授がやってきて、現在その教授が研究していることにT.K.フィルミックスを使って実験をしたい旨申し入れがあった。もちろん快くOKしたが、それよりも日本の大学などと違い、教授同士の垣根がなく、ごく自然に「こんなにたいそうな機械を持ち込んで、いったい何をやっているんだい」と興味深げに話し掛けてくることに麻と二人で関心しきった。このような環境でなければ本当はいい研究や自由な発想が出て来ないのだろうとさえ思った。
今後、このプロジェクトチームで実験方法を考えて連絡してくれることになり、このプロジェクトの成果に期待を膨らませMITを後にした。
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