社報shinko〜親交〜 2005年12月号

スペシャルインタビュー 〜タケカワユキヒデさん〜

マーケティング本部 広報室 田崎 早苗

社名変更を機に、社歌も新たに作るのが決まったある日。古市社長が「タケカワユキヒデさんに作曲してもらう」と言われ、最初は冗談で言っているのかと思いましたが……。なんと、それは本当に実現したのです!
タケカワユキヒデさんといえば、「ガンダーラ」「モンキーマジック」「ビューティフルネーム」「銀河鉄道999」など、幼いとき大好きだったゴダイゴの方ですよ!こんなにすごい人に社歌を作ってもらえるなんて!!
今回は社名変更記念スペシャルとして、社歌「PRIMIX」を作詞・作曲していただいた、タケカワユキヒデさんにインタビューをさせていただきました!

田:田崎、 タ:タケカワユキヒデさん



田: 当社の社歌を作られる際に、苦労されたことなどお聞かせください。

タ: まず、普段、僕が曲を作るときの行程のお話しからしましょう。僕は、打ち合わせ中に、曲を作ってしまうことが多いんです。白い紙に自分で五本、線を引いて、その上に音符を書いていくんです。打ち合わせの印象が新鮮なうちにメモをとっておきたいからなんですが、CMなんかだと、作品が短いので、その場で最後まで作ってしまうことが多いけど、まとまった曲の場合は、断片的なメモのままですませて、そして後日、締め切りが近くなったとき、完成させるという具合です。
曲が完成したら、アレンジをして録音になります。少し前まで録音は、演奏者の人たちをスタジオに呼んで録音してたんですが、今はコンピューターを使うことで、全部一人で行えるようになったんですね。僕の場合は、作詞・作曲・アレンジ、歌、そしてトラックダウンなども一人でやっちゃうんです。

さて、今回、まずメロディーは、打ち合わせ中ではなく、古市さんと打ち合わせしたあと、自宅に帰る途中、タクシーの中で書きました。 僕は元々、英語の歌詞で曲を作っていたので、英語の単語がメロディーを呼ぶっていうのかな。気に入った英単語一言だけでもメロディーを作れるんです。「PRIMIX」ってかっこいいじゃないですか。だから、「PRIMIX」を使った、メロディーがパッと浮かんだんですね。で、今回何が大変だったかと言うと、こんなことを言っていいのかなぁ……。実は打ち合わせのときに古市さんが「こんな雰囲気の曲がいい」と、ゴージャスでしっとりとした曲を例に出してお話されていたことをすっかり忘れたまま、どちらかというと、元気のいい曲を書いてしまったのです。

一回目の提出のときに、「打ち合わせで話した雰囲気と違いますね」と言われてしまって、その話を思い出したのですから間が抜けた話です。これは僕が悪いと思って、その後すぐに、もう一曲、まったく違う曲を作ったのです。2曲目のほうはアレンジも凝って、ゴージャス感を加えたのですが、でも僕としては、一曲目が気に入っていたので捨てがたく、もしかしたら、「最初に作った曲を直したタイプも聞いてみたい」と言われるかもしれないと思って最初の元気な方の曲も少し、ゴージャスにアレンジし直して、2回目の提出時には、2曲提出してみたのです。そうしたら、1曲目が良いという返事が帰ってきまして。結局、新たに作った2曲目は無しになってしまいました(笑)。

でも、思う存分、やったので、爽快な気持ちです。先ほど説明したとおり、以前、スタジオで人を集めて演奏をしてもらっていた頃は、一回録音してしまうとやり直しがきかなかったんですよ。後で、バイオリンの音をもう少しこうしたかったなと思っても、もう一度人を集めるのは、金銭的にも、時間的にも大変なので。でも今は機械でできるから、とことん自分が納得するまでこだわって作れる訳です。さっきも話しましたけど、せっかく新しい2曲目を作ったのに、前のタイプにも手を加えて、もう一つ提出しようかなって思っちゃうくらいですから。まあ、凝り性なんで、ただ単に後悔したくないというだけなんですけどね(笑)。

田: 当社は攪拌機メーカーで、一般の方には業務がわかりにくいと思うのですが、歌詞を考えていただくのは難しかったのではないでしょうか?

タ:  歌詞の中に「みんなの思いを混ぜて作る未来」というのがあるのですが、最初はこの表現は入れてなかったんですよ。最初、会社の仕事を具体的に説明するような言葉は、歌詞に入れない方がいいかな、と思っていたのですが、だんだん詩の世界に入って行くにつれて、こういう表現ならいいんじゃないかと、急に思いついたんです。それと最後の部分に「この世界があふれるほどの愛を」というのがあるんですけど、このフレーズが一番気に入っているんですよ。このフレーズは、攪拌機とは直接は何の関係もないんですけど、みんなで未来を作っていくんだ、人の気持ち、思いを混ぜて、最後はどこに行くのかな?って思ったときに、きっとここに行くんだなと、到達点はここだと思ったんです。

田:  実は、タケカワさんのお話を聞く前に歌詞を見たときに、てっきり当社からいっぱい要望を出したのかなと思ったのです。社員へのメッセージや、当社が目指す方向、伝えたいことがたくさん歌詞の中に盛り込まれていたので。
社名変更をする理由は色々あって、未来の技術を担う会社になりたいというのも一つなのですが、なによりも今、若い社員に元気がなくて……。どうすればもっと元気を出してもらえるかと、CS委員会でESのことも話し合っているのですが、結局最終的には「愛」や「人の気持ち」にたどり着くんですよね。だから「この世界があふれるほどの愛を」という歌詞を見たときに、一番伝えたいこと、感じて欲しいことを社歌に盛り込まれていて感動したのです。今、お話を聞いて、特に当社から要望をさせていただいていたわけではなかったと知り、すごく驚きました。

タ:  そう言ってもらえるとすごくうれしいですね。若い社員に元気がないというのは古市さんもおっしゃってました。
苦労話に戻りますが、歌詞をどこまで堅くしてどこまで堅くしない方がいいのかというのが苦しみましたね。僕の場合、堅苦しい曲を作ってくれと言われれば作りますけど、基本的には圧倒的に堅苦しくない曲を作るタイプなので……(笑)。音楽の場合は、固い音楽とやわらかい音楽、つまり、古典的な社歌の雰囲気と、新しいタイプの曲を混ぜ込むと変になってしまいますが、歌詞の場合は柔らかい表現の中に堅くるしい表現を混ぜても意外と、トーンが変にならないんです。今回は前半部分の歌詞に「たゆまぬ努力を」という、少し堅苦しい表現を入れておいたのですが、最終的には抜くことになりました。これを入れておくとちゃらんぽらんじゃない雰囲気は確かに出るので、どうしようかなと思いつつ入れておいたのです。いかにも経営者の人ってこういう言葉、好きそうじゃないですか。でも、古市さんは、新しいタイプの経営者なんだなと思いましたね。最後で「やっぱり入れないほうが……」と言われました。書き言葉ではなく、話し言葉で統一して欲しいと。統一感を求める人なんだと思いました。
最近の邦楽はわざと古い言葉を入れたりして、乱雑なところがあるのです。最近のアメリカではどうかわかりませんが、英語は一般的に言葉の統一感を崩さない厳格なところがある言語です。古市さんはアメリカでの生活が長かったので、そういうところを厳格に守っているのかな、なんて勝手に思ってたんですけど(笑)。

田:  最初は難しい曲に感じて、みんなで上手く歌えるかな?と思ったのですが、2〜3回聞いたら、メロディーが頭の中から離れなくなって、すごくインパクトがある曲だなと思いました。

タ: PRIMIXっていうところでしょ。

田: そうです。そうです。今ここで歌えるくらい!覚えやすい曲ですね。

タ:  苦労と言えば、もう一つありました。音の高さのことですが、社員の人たちは男性が多いと聞いていたのに、それも忘れていて、最初に提出したときは、女性が楽にうたえる高さのキーにしていたので、そのオクターブ下で歌う男性には少し低くなってしまった。その後、男性が多いと言うのを思い出して、キーを男性に合わせることにしました。

田:  うちはおじさんが多いですから(笑)。もう少し女性が増えると良いのですけど、業界的に難しくて。 みんなで話していたんですけど、社歌で合唱大会とかカラオケ大会をしようなんて(笑)。そうやって馴染んでいってもらえればと思っています。

タ: それはいいですね!

田: 素晴らしい曲を作っていただきありがとうございました!



緊張していた私を気遣い、優しい口調でタケカワユキヒデさんはお話してくださいました。余談で当社の業務について話したのですが、「こういうところにも機械が活躍しているんですよ」と話すと、「それはこういうことですね」と、よく理解されていて驚きました。曲を作る姿勢、プロフェッショナルとは何かというのを、今回の取材を通じて深く身にしみました。作っていただいた社歌を大切に、後世に伝えていきます。本当にありがとうございました。

タケカワユキヒデ氏 PROFILE

1952年生まれ。1975年全曲英詩のアルバム『走り去るロマン』でシンガーソングライターとしてデビュー。 翌76年、当時から活動を共にしていたミッキー吉野らとゴダイゴを結成。作曲家タケカワの鋭い感性に裏打ちされた独特のメロディーは『ガンダーラ』『モンキーマジック』『ビューティフルネーム』『銀河鉄道999』などの大ヒットを生み、それらの曲はいまでも多くの人に親しまれ続けている。
ゴダイゴ以降は中森明菜、酒井法子、松田聖子、光GENJI など他のアーチストにも精力的に楽曲を提供。1989年アルバム『I LOVE YOU』を発表し、ソロ活動を再開。 同時に、情報番組『U.S.A.エクスプレス』の司会や、旅番組『いつか行く旅』のレギュラー、などでお茶の間に進出、その後、推理小説『元総理探偵霧島幸四郎』(講談社)を発表するなど、マルチアーティストとして、活動を始める。
2000年3月 には 人気アニメ『ドラえもん/おばあちゃんの思い出』の映画の主題歌『ハグしよう』(作詞/作曲 タケカワユキヒデ)と 花王リーゼ のCMで現在も好評OA中の『気分は上々』のカプリングCDを愛娘二人のユニット、ティーズ・カンパニーと一緒に発表。 現在でも、ティーズ・カンパニーとは、コンサート活動等で行動を共にしている。
『おもいっきりTV』(NTV)、には1990年以来準レギュラーとして出演。人気こども番組『天才てれびくんワイド』(NHK)では音楽プロデュ−サ−を 1998年から今に至るまでつとめている。
少年マンガ雑誌を六千冊所有するマンガの評論家としても知られ、2003年にはアメリカの大学UCLAで、2005年にはベトナムのハノイ大学で、マンガに関する講義をしてきている。また六人の子供を持つ、子煩悩な父親としても知られ、べストファザー賞(1999年度)を小渕元首相らと共に受賞した。 2001年12月には、思春期の子供をもつ親たちに贈る著書『娘を持つ父親のための本』 (集英社) が出版され、話題の本となる。

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