Today's Notables 2018年03月

大阪商工会議所 キューバ視察ミッション

代表取締役社長 古市 尚


さる11月18日より11月23日の旅程でキューバ共和国、首都ハバナを訪れました。今回の視察ミッションは現地、商業会議所ギエン会頭との面談、在キューバ日本大使渡辺様による歓迎ディナーレセプション、マリエル開発特区の視察など通常の観光では訪れることができない有意義な内容でした。また、同行メンバーに日本の一般社団法人キューバ・シガー教育協会の副会長がおられたおかげで、通常なら部外者立ち入り厳禁の最高級シガー(葉巻)工場も視察することができました。
※写真:ミントとライムのさわやかなキューバのラム・カクテル「モヒート」と最高級葉巻

キューバの面積は本州の約半分の11万k屬如▲リブ海、大西洋、メキシコ湾の3つの海に面した島国です。地理的には北アメリカにあたるのですが、広義の中央アメリカにも含まれるということです。人口は東京都とほぼ同じ124万人。ご存知の通りキューバは1959年のキューバ革命によって、共産党が「社会および国家の最高の指導勢力」(憲法第5条) とする「社会主義国家」(憲法第1条)となりました。革命当初はソビエト連邦に依存していましたが、1991年にはソビエト連邦が崩壊し経済危機に陥り2000年代はベネズエラへ経済的依存をしてきました。革命以来実権を握ってきた国家評議会議長(国家元首)フィデル・カストロは2008年2月に退任を表明し、現在は弟のラウル・カストロが国家評議会議長を務めています。今年2月にはラウル・カストロが国家評議会議長を引退することが表明されており、後継者が誰になるのかが注目されています。ラウルは就任早々、規制緩和を次々打ち出し、一般国民の携帯電話の所持やホテル宿泊、家電製品の購入などが自由にできるようにしましたが、実際には国内の収入ではそれらのものが買えないのが現状です。その背景のひとつに二重通貨制があります。通貨は兌換ペソ(CUC) と人民ペソ(CUP) があり、人民ペソはキューバ人の最低限の生活維持のためとなっていますが、キューバ人の購買力を著しく低くしています。兌換ペソは人民ペソの約25倍なので、観光客などは同じものを買うのにキューバ国民の25倍を支払うようになっています。仕組みを下記の図で表します。(出典:在キューバ日本大使館)
図1:生産者の構造図2:被雇用者側


図にも書かれているようにキューバ国民の70%は公務員で、平均月収は日本円で3,500円とされていますが、政府高官や医者、大学教授、国営企業のトップなど特別な地位の人以外の平均月収は1,500円程度で、仕事ができようが一生懸命仕事をしようが差をつけないそうです。これが社会主義なんですね。携帯電話を持っている人もいますが、データ通信は制御されています。私も日本の携帯電話を持って行きましたが、3Gのサービスがないために何も見ることができませんでした。またインターネットも政府の方でコントロールしており、ホテルではwifiサービスありとなっているものの、全くつながりません。
農業、漁業、酪農業も発達していません。郊外で暮らしている人たちはその地域で採れたものを食しているのでしょうが、食品の70%は輸入に依存しています。船があると亡命してしまうから海に囲まれているのに漁業もないという話を聞きました。道路や鉄道といった交通インフラも発達していないため、例え農産物を作っても運ぶ手立てがなく、サプライチェーンというのが成立しない仕組みになっています。食品は今も配給制で街中にも配給所がありました。クルマはカローラクラスで1,600万円(日本円)もするそうで、クルマを個人で持っている人はほとんどいません。キューバといえば50年代のアメ車が有名ですが、それも全て国のもので運転手は公務員。オープンカーやきれいにレストアしてあるのは観光タクシーで、ボロボロなのは地元の人が利用する乗り合いタクシーです。台数的に一番多いのはソビエト製のラーダというクルマですが、こちらも50年ぐらい前のものがほとんどです。私が乗ったのは1952年製のダッジでしたが、エンジンも当時のものを使っていると言っていました。もちろん、テレビは国営放送のみでまだブラウン管が主流だそうです。一方で医療費は無料、学費も大学まで無料、家や食料は支給され最低限の生活は保障されており、治安も中南米一いいそうです。余談ですが離婚の際の慰謝料などもないそうで、3、4回離婚、結婚するのは当たり前のようです。しかし生活が豊かではないせいか、出産率は低く少子高齢化が進んでいるとのことです。


オープンカータクシー

革命広場にて


今回ハバナを訪問して社会主義のすごさを実感しました。交通インフラや情報インフラを発達させず、人々のコミュニケーションさえも阻害しているように見えます。しかし、よく考えてみれば何も情報がないのですからやりたいことや買いたいモノの発想がなく「欲」もさほどないのでしょう。マズローの欲求5段階説を引用すると第一階層の「生理的欲求」、第二階層の「安全欲求」、第三階層の「社会的欲求(帰属欲求)」、第四階層の「尊厳欲求(承認欲求)」まではある程度満たされているのでしょうが、第五階層の「自己実現欲求(自分の能力を引き出し創造的活動がしたい)」は社会主義国では満たされないでしょう。マズローの説にはありませんが、「自由欲(自由でありたい、何事にも縛られたくない)」という欲は社会主義社会、共産主義経済ではかなり規制されています。「個人の自由」に対し「社会の規律」という個人の自由な考え方を優先するか、個人の自由を規制して社会全体の調和を優先するかが自由主義と社会主義との分かれ目ですが、自由でありながら社会全体の調和がとれるのが理想でしょう。
現在の日本はモノが豊かすぎて若者たちは「欲」に乏しいと言われていますが、自己実現欲求がなければ、何も開発されずモノの発達、社会の発展は期待できません。自由でいくらでも情報が入るこの国では大いに「欲」を持ち、自己実現能力を発揮し、会社の発展、社会の発展に寄与してもらいたいものです。

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