社報shinko〜親交〜 2016年05月号

化粧品のスペシャリスト、高橋さんに聞く! 美容のあれこれ
■コラーゲンの真実その2

乳化分散技術研究所® テクニカル・ディレクター 高橋 唯仁

大手化粧品メーカで長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト、乳化分散技術研究所® 高橋さんの美容コラムです。前回はかなりダメ出しをされたコラーゲン、気になる続きをどうぞ!


前回はかなり否定的な内容になってしまいましたが、コラーゲンの美容効果は、実はもっと奥が深い。最近の研究例を紹介しながら、コラーゲンて実はすごいんですという話をしたいと思います。

まずは肌に塗る効果から。いわゆるコラーゲン配合化粧品です。前回、皮膚に塗っても真皮まで浸透して元のコラーゲン繊維として働くわけではない、といいました。確かに、コラーゲンは分子が大きすぎて皮膚に浸透することができません。でも外から塗ることは無意味かというと、全然そうではなく、一番外側の角層に留まるだけで十分なのです。注目すべきはコラーゲン(ゼラチン)の保水力。ゼラチンでできているプリンやゼリーを見ればわかるように、自分の重さの何十倍、何百倍もの水を保持する力があります。ですから、カサカサ乾燥肌には非常に優れた保湿剤として働きます。さらにゼラチンは粘弾性体のひとつで、滑らかさと弾力を併せ持った素材です。(詳しくは弊社ホームページかくはん塾「文系でもわかるレオロジー」参照。)ですから、肌の潤いとそこそこのぷるぷる感を実感することができて、乾燥時のスキンケアには十分威力を発揮してくれるのです。

しかし、コラーゲンの本来の働きは、真皮層で繊維状になることです。そのためには、前回お話しした通り、コラーゲンを外から与えるのではなく、自ら作らなければいけません。では自らコラーゲンを作り出すにはどうしたらよいか?その答えのひとつとして最近、コラーゲンを作るにはコラーゲンが必要であるということがわかってきました。コラーゲンを食べてもどうせ消化されてアミノ酸になるだけだから、全く意味がない!というのがこれまでの考え方でした。しかし最近では、コラーゲンを作るにはやはりコラーゲンでないとダメという考え方に変わりつつあります。その理由のひとつは、コラーゲンを構成するアミノ酸が他のタンパク質とかなり違うという事実です。コラーゲンには、特徴的なGXYの繰り返し構造というのがあります(図1)。Gはグリシンというアミノ酸。これが必ず3個に1個出てきます。XとYは任意のアミノ酸ですが、XとYにも、他のタンパク質ではあまり見られないアミノ酸が多く含まれます。すなわち、コラーゲンは構造的に極めて珍しいタンパク質なのです。ですから、コラーゲンを作るためには、普通にタンパク質を摂ったのでは、どうしても不足するアミノ酸が出てきます。そのような材料の供給源として、コラーゲンを食べること自体、無意味どころか非常に大事なことなのです。

図1:コラーゲンの分子構造

さらに、コラーゲンじゃないといけないもうひとつの理由があります。それはコラーゲンペプチドと呼ばれるコラーゲンの破片に、肌状態を改善する効果があるらしいということです。ペプチドとは、タンパク質が分解されてアミノ酸がいくつかつながった小さな単位のことです。タンパク質が消化されると、アミノ酸まで分解されずに、ペプチドの形で吸収されるものもあります。コラーゲンは極めて珍しい構造のタンパク質ですから、ペプチドもまた、コラーゲン特有のものがあって、それらがそれぞれ色々な役割を持っているらしいのです。実際、コラーゲンを食べることによって、肌の水分量、弾力が上がったとか、しみ、しわが改善したという事実が次々と学会誌、専門誌に掲載されました。その仕組みはこうだと考えられています。消化されてできたコラーゲンペプチドは腸から吸収されて、血液と一緒にコラーゲンの工場である線維芽細胞に運ばれます。細胞にはトランスポーターというペプチド御一行様専用の入口があって、そこから細胞に取り込まれて、コラーゲン製造の指令を出して肌改善をするというのです。こういうコラーゲンペプチドの効果は、皮膚ばかりでなく、骨、軟骨、関節、血管など、コラーゲンが存在するあらゆる臓器で認められて、様々な疾患に効果があるという研究例が報告されています(図2)。コラーゲンペプチドで血圧や血糖値が下がったという、メタボ男子には非常に嬉しいニュースもあります。

図2:コラーゲンの分解とその効果

このように、コラーゲンそのものより、小さくなったコラーゲンペプチドの方に効果がありそうということで、機能性食品、サプリとして急速に出回るようになりました。水に溶けやすく加工しやすくて、吸収されやすいというのも人気の秘密ですね。もちろんコラーゲンペプチドは、皮膚に塗っても良さそうです。なぜなら、アミノ酸が2~3個つ ながったものであれば、分子量は高々500程度。前回、皮膚を浸透できるのは分子量500以下といいましたので、理論上は十分皮膚から浸透できます。しかも、皮膚から吸収されれば、胃や肝臓でこれ以上分解される心配もありませんので、さらに効率的といえますね。こういう説があります。あるコラーゲンの権威のコメントです。体が炎症や傷などのダメージを受けると、構成成分であるコラーゲンの分解が起こる。分解されてできたペプチドが損傷した部位に働きかけて、組織を修復して炎症を抑える。これは生き物に備わった自分を守るための仕組みだというのです。確かにそうかもしれません。

さて、2回にわたってコラーゲンに関するいろいろなことをお話ししてきました。賛否両論いろいろある世界ですが、ようやく科学的な証拠が示されるようになって、効果あるはずないやないか!といっていた専門家の冷たい視線も少々変化してきたようです。塗っても食べてもコラーゲンとしてそのまま補給されるわけではありませんが、肌改善も含め色々な効果が期待できる、それだけは確かなようですね。しかし、まだまだわからないことだらけ。事実はそう単純ではないようです。いずれにしても、ふかひれスープを食べて、翌朝ぷるぷるになったというのは気のせいだとしても、数日後忘れた頃にぷるぷる感がやってきたら、ひょっとするとコラーゲンペプチドの効果かもしれません。でも同じコラーゲンであれば、高価なふかひれじゃなくても、100円のコーヒーゼリーで十分だと思いますけどね……。(あくまで個人の感想です。)

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