社報shinko〜親交〜 2015年05月号

化粧品のスペシャリスト、高橋さんに聞く! 美容のあれこれ
■日焼け止め化粧品

乳化分散技術研究所® テクニカル・ディレクター 高橋 唯仁

大手化粧品メーカで長年従事されてきた化粧品のスペシャリスト、乳化分散技術研究所® 高橋さんの美容に関するコラムです。今回はそろそろ気になる紫外線のお話です。毎日使う日焼け止めにも、私たちの「混ぜる技術」が活躍していました!



5月になりました。暑くもなく寒くもなく非常に快適な季節です。しかし、急激に紫外線の量が増えてくるのもこの季節、油断大敵です。ある化粧品会社では3月20日を「日焼け止めの日」に指定しているくらいですから、5月ではもう手遅れ?いえ、そんなことはありません。紫外線対策に本腰を入れるべく、今回は日焼け止め化粧品の話をしたいと思います。

そもそも紫外線とは何でしょう?太陽光には目に見える光(可視光)と目に見えない光があります。図のように、目に見える太陽の光は、紫色〜赤色の光が合わさったものです。紫外線は、その紫の光より波長の短い、目には見えない光のことを言います。

太陽光の区分と紫外線の種類
紫外線にはA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)があります。このうち、C波はオゾンなどに吸収されて地上には届きませんから、我々の皮膚がさらされているのはA波とB波です。これらのエネルギーによって日焼けを起こすわけです。
日焼けには「赤くなる日焼け」と「黒くなる日焼け」があるのはご存知ですね。日光に当たってすぐ皮膚が赤くなるのはサンバーンと呼ばれていてB波の影響です。光のエネルギーによるやけどみたいなもので、炎症、皮むけ、水ぶくれなどの症状が現れます。一方、少々時間がたってから皮膚が黒くなるのはA波の影響です。この現象をサンタンと呼びます。A波は皮膚の深いところまで到達して、メラノサイトという細胞を刺激します。この細胞がメラニンを作ってパック詰めにして、土のうのようにすることで紫外線から身を守るイメージです。 黒くなること自体、もともと人間が持ち合わせている生体防御の仕組みなのですが、放っておくとシミの原因になってしまいます。また紫外線は日焼けばかりでなく、コラーゲンなどにもダメージを与えるため、しわ、たるみの原因になるばかりか、最悪の場合、皮膚がんの原因になる場合もありますから、A波、B波ともに注意が必要です。

日焼け止め化粧品には、SPFやPAといった数値が表示されています。おそらく、日頃この数値を選ぶ基準にしているのではないでしょうか。
SPFは「赤くなる日焼け」に対する効果の目安です。この数字は、皮膚が赤くなり始める最小の紫外線量を、塗った部分と塗らない部分で比較したものです。SPF30なら、何も塗らない時に比べて、30倍の紫外線量を浴びた時に初めてわずかに赤くなり始めることを意味します。その昔、SPF戦争と言われるぐらい、SPFの数値を競っていた時期がありました。SPF100とかそれ以上の表示がある製品が出回っていたのですが、よっぽど過酷な条件に身をさらすのでなければ、50以上の数値には意味がありません。なので、現在はSPFの表示は50までと定められていて、それ以上のものは、遠慮がちに+をつけて50+と表示しています。一般に、普通に生活をするのであれば、SPFは30もあれば十分と言われています。
一方、PAは「黒くなる日焼け」を防止する効果を表します。SPFと同じように、A波を浴びてから一定時間経過してわずかに黒くなる最小の紫外線量の比率を、プラスの数で表しています。+の数が多いほど防止効果が高いことを示し、PA++++がマックスです。プラス1個で効果が2倍と定義されていますから、プラスが4個ということは、何も塗らないより16倍の効果があることを表します。と言うわけで、現在の最強の日焼け止めはSPF50+、PA++++ということになります。

日焼け止め化粧品は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤という2種類の原料を水や油に混ぜて作ります。紫外線吸収剤は、ある特定の波長の紫外線を吸収する性質を持った化学物質です。一方、紫外線散乱剤は、非常に粒子の細かい白色の粉末で、紫外線を弾き飛ばして肌を守ります。困ったことに、A波を効率的に吸収する紫外線吸収剤は、現在のところあまりありません。また中には、吸収効果はあっても、粉と一緒になった途端、変色してしまったり、分解して紫外線吸収力がなくなったり、厄介なことをしでかすことがあります。(私も以前に苦労したことがあります。)したがって、A波を防ぐのは、ほとんど紫外線散乱剤が頼りと言って良い状況です。
この散乱剤の効果は、分散の良し悪しで大きく変わってくることはあまり注目されていませんでした。しかし、攪拌技術は紫外線防御効果にも大きく関わっています。微粒子をよくかき混ぜて均一に分散させることによって、白浮きしにくく、ムラのない透明感の高い仕上がりになると同時に、紫外線の防御効果が高くなります。光がある媒体(この場合は紫外線散乱剤の分散液)を通して内部に入りにくくなる効果は、光の散乱、吸収による減衰量で評価することができますが、その値が分散の度合いとともに高くなっていくことが確認されています。紫外線の攻撃に対する堅い守りは、攪拌による紫外線散乱剤の分散状態が決め手になっているのです。

高橋さん
さあ、今年も暑い夏が待っています。今のうちから万全の紫外線対策をお勧めします。
では、楽しい夏をお迎えください。

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